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社会人ドクターとして,博士号を取得した後,おもわぬ話が舞い込んできたり,予想外の展開によって転職の道が開けることがあります.
その辺りの事情について考えてみましょう.
【 円満退職は難しい? 】
社会人ドクターとして研究活動を続けていくうちに,いろいろな出会いがあるかと思います.例えば,学術大会などで知り合った他大学の先生,あるいは,研究機関や民間企業の研究者たちです.そして,知らず知らずのうちに,彼らを含めた大きな人的ネットワークが構築されていくことがあります.
社会人ドクターは,基本的には勤務先からの「派遣」という形で大学院に通うことになると思いますので,当初の目的である博士号を取得すれば,勤務先に戻って,力を発揮することが望まれます.
ところが,諸事情(勤務先での仕事内容,人間関係,スカウトなどを含めます)により,勤務先を辞めて,転職をする可能性もあります.
事前に誓約書を作成していると,その条件に従って,博士号取得に要した費用(学費や交通費など)を返還する必要があるかもしれませんが,退職するにあたり,勤務先との話し合いは重要です.
また,「社会人ドクターによる博士号取得」を目指した留学が勤務先において制度化されているような場合,後に続く者に影響を与えますので,余計に,しこりを残さないように,円満解決することが大切です.
【 自分を知ることが大切! 】
博士号を取得したことにより,自分の能力を過信したり,天狗になる人がいるかもしれませんが,客観的に判断した結果,勤務先でその能力を全く活かせないような状況であれば,転職を考えることも悪くないと思います.なぜなら,博士号は,何らかの研究分野で何かを追求するためのライセンスのようなものであり,また,その品質保証書を兼ねているということにもなるからです.
私は以前,指導教官から,
「課程ドクターというのは,一人前の研究者としてやっていけることを証明するもの」
と言われたことがあります.
これは,一流の研究者ではなく,とりあえず,初心の研究者としてスタートラインに立つことができるという意味です.ですから,転職するにしても,その世界で新たな下積みが始まることを覚悟する必要があります.
大学や研究機関への転職を考えた場合,社会人ドクターを経て博士号を取得した時の「年齢」と博士号取得後の「研究業績」などが大きく影響します.
ポスドク(博士号取得後の任期付きの職/ポストドクターの略),助教,研究員などの求人は,年齢の条件として「35歳以下」が一般的ですので,学位取得時の年齢が35歳を超えていると,その時点で,かなり厳しい選択肢となります.また,仮に年齢条件をクリアできたとしても,年齢に応じた学位取得後の実績も問われます.
一般的に,学位取得後にそのまま研究の道に進めば,毎年何らかの業績が残ることになります.つまり,年数が経てば,その分だけ業績もあるはずですから,学位取得後しばらく勤務先で普通の仕事をして研究活動から離れてしまうと,その空白の年数を含めた業績が求められてしまいます.
一方,いきなり准教授や教授への転職を狙うことも不可能ではありません.
しかし,さらに条件が厳しくなります.年齢は問題ありませんが,求められる業績の幅が広がり,論文や発表といった研究業績だけでなく,助成金などの外部資金獲得,特許,教育(授業)などの実績も問われます.
社会人経験者の場合,例えば,民間企業での研究経験を活かすことができる場合もありますので,一概には言えませんが,外部資金の獲得や,高専あるいは大学などでの教育実績については,簡単には得られない厳しい環境にあるのではないかと思います.
結局のところ,博士号を取得したからと言って,すぐに転職できるほど甘くはなさそうです.
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