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学会発表は学術大会等での一時的な発表となりますが,論文として残しておくことができれば,学会に参加できなかった数多くの人たち,あるいは,今後新たに研究をしようとしている人たちに対して,その研究成果を知らせることができます.
後世に研究履歴を残す,それが,学会誌への論文投稿です.
【 論文にも種類がある? 】
多くの学会は定期的に刊行物(学会誌)を発行しています.
例えば,特集記事,研究室の紹介,学会参加報告の他に,投稿論文等を掲載しているページがあります.また,学会誌によっては,投稿論文のみという場合もあります.
論文は,大きく分けて2種類(原著論文,その他の論文)あります.
原著論文は,某学会誌の投稿規程によりますと,
「独創性に富み,目的,結論等の明確な他学会誌を含めて未投稿の研究論文」
と定義されています.
その他の論文には,研究速報,技術資料などが含まれます.
例えば,原著論文のようにまとまった成果がその時点では出ていないものの,独創的な研究(仮説含む)などを早急に発表する必要があれば,研究速報として扱われます.また,学会発表の際に,予稿集(前刷集)が発行されることがあります(原著論文ではありません).
英語で言えば,原著論文がPaper,予稿集(前刷集)がProceedingと呼ばれています.一応,どちらも査読(審査)のようなものが入りますが,Paperの場合は研究論文としての評価尺度から査読を行うのに対し,Proceedingの方はあくまでその学会で発表するのにふさわしいかどうか,また,どのセッションに組み込むのが適切かについて,評価されます.
また,学会(学術大会)の後に,特集号が組まれることもあります.その際に,原著論文,あるいは,研究速報として論文を投稿することが一般的な流れとなります.ただし,博士課程の業績としてカウントされるのは原著論文のみとなります.
【 恐怖の査読!? 】
論文が学会誌に掲載されるまでの流れについて,私が投稿した事例に基づいて,みていきましょう.
まず,原著論文を学会に投稿すると,学会内の編集委員会にて論文が受け付けられます.その後,分野(研究テーマ)に応じて,適切と思われる査読者2名に査読表と論文のコピーが送付され,約3週間を目処に査読が行われます.
その際に,査読者の氏名,所属機関などは論文投稿者には知らされません.また,逆に,論文投稿者の氏名,所属機関もまた査読者に知らされません.お互いに,匿名の条件で厳正な審査を行う必要があるからです.
編集委員会も査読を行いますので,実質,3名の査読者による判定結果により,論文の行く末が決定されます.結果は,
「受理」
「条件付き受理」
「未定」
「棄却」
のいずれかとなります.
「受理」の場合は,内容的には問題なく,後は,用語,表現,言い回しなど些細な訂正を行う程度です.
「条件付き受理」および「未定」の場合は,査読表と査読者(編集委員会)のコメントを投稿論文と一緒に論文投稿者に返送し,修正を要求します.コメント内容(疑問点,問題点,修正要求箇所など)の訂正を条件に受理するというものです.
ただし,査読者や編集委員も人間ですから,勘違いや思い違いをすることも十分に有り得ますので,コメントに対して,論文投稿者が反論することもできます.また,複数の査読者のコメントが矛盾する(極端な話,A氏はOKで,B氏はNGとコメントするなど)場合もあります.
さて,論文の修正について,各査読者のコメントに丁寧に応えていけば,各査読者がそれを否定することができませんから,受理される可能性が高いと思います.もちろん,1回だけのやりとりでは受理されないこともありますので,2回までは普通だと思って素直に修正していく心の余裕が必要となります.
ちなみに,再投稿の期限は6ヶ月以内が一般的です.慌てずゆっくりと対処していくことが大切です.
「棄却」の場合にも,査読者に対して反論することはできますが,まず,駄目だと思って間違いありません.根本的に評価に値しない論文だということですから,諦めて次に臨むべきでしょう(アレンジして他の学会に投稿する手もあります).
【 論文はシンプルに! 】
論文を書くにあたり,心掛けとして必要なことは,
「分かりやすく,かつ,効果的に書く」
ということです.
まず,これまでに発表された他人の論文に目を通し,自分の研究との差異を確認します(面倒な作業ですがとても大切です).研究者として,他人の業績を無視することは絶対に避けなければなりません.自分勝手な行動は,非常に嫌われる行為です.
先人たちの業績(遺産)を踏まえた上で,自分の研究の主張や実験方法,結果等が他の研究よりも合理的,あるいは,優れていることを客観的に明らかにすることが大切です.もちろん,再現性があることも重要です.
そして,当然のことですが,データの捏造は,絶対に駄目です.
「嘘をつかないことがドクターとしての証」
と私の指導教官は話していましたが,良い結果を得るために嘘をつくことは最低な行為です.仮にうまくいったとしても,いずれ,破綻します.
論文の構成は,
「緒言」
「方法」
「結果」
「考察」
「結語」
「謝辞」
「参考文献」
が一般的です.
この中で,最も重要な部分は「考察」です.考察には,
①実験で得た結果から新しい知見を整理し,解明する
②これまでに知られている結果と関係付け,あるいは他の研究との相違点に検討を加える
③これらから導き出した法則性や論理的な推論を加える
という要素がありますが,いずれも,結果から論理的に導き出す作業となりますので,まさに論文の肝となります.
また,参考文献の引用も忘れてはいけません.独創性を持つためには,類似研究が既に発表されているかどうかを事前に知る必要があります.
【 世界的に有名な学会誌を目指す! 】
学会誌にはレベルがあります.
ニュースでよく耳にする世界で最も権威のある学術雑誌のひとつ「ネイチャー(Nature)」や「サイエンス(Science)」はレベルが非常に高いので,投稿される論文の質も高いですし,今までに,ノーベル賞クラスの論文が何度も掲載されています.
このため,ネイチャーやサイエンスに掲載された論文は,他人の論文の中で参考文献として引用されることが多いようです.被引用回数の指標としてインパクトファクター(IF)があります.一般的に,IFが高い学会誌はレベルが高いと言われていますので,そのような学会誌に自分の論文が掲載されれば,その価値は高いと言えるでしょう.
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